コラム

【タックス】ペーパーレスと税務       茨城県つくば土浦税理士 武石光弘  

 新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークを導入する企業が増えています。テレワークを実施するために、書類のペーパーレス化を進めている企業も多いのではないでしょうか。今月は、会社が保存すべき書類、保存期間、ペーパーレス化の導入にあたり税務上、注意すべき点についてご紹介していきます。

 

Ⅰ 領収書がないと経費にならない?

「領収書がないと、経費で落ちないですよ」経理担当者から言われるであろう言葉です。領収書などは法人税法上、「帳簿書類」の一部として保存が求められます。また、消費税法上も領収書(正しくは、請求書等といいます)の保存を求めており、領収書の保存がない場合、消費税の控除ができないこととされています。

消費税法上、請求書等には以下の事項が記載されている必要があります

求書等の記載事項

発行者の名称、受取人の名称(宛名)、取引年月日、取引内容、取引金額

(軽減税率の対象品目である旨、税率ごとの税込合計金額)

消費税法上は、レシートであるか、領収書であるかは関係なく、上記の要件を満たしていないものは、認められません。例えば、手書きの領収書で、宛名が「上様」、内容が「お品代」とされると、要件を満たしていません。

一般的にレシートについては宛名がありませんが、例外として、小売業、飲食業、タクシーなど不特定多数を相手とする業態については、宛名の記載は不要とされています。

 

Ⅱ 領収書などの書類は、何年間保存する必要がありますか?

では、領収書のほか、保存すべき書類はどんなものがあり、それぞれ何年間保存が必要でしょうか。根拠となる法律や保存すべき書類の種類ごとに、以下の通りです。

会社法上   10年間

会計帳簿(総勘定元帳、仕訳帳など)

計算書類(貸借対照表、損益計算書など)

法人税法上    事業年度ごとに7年間(赤字の年度は最長10年間)

帳簿(総勘定元帳、仕訳帳など)

書類(棚卸表、注文書、納品書、請求書、契約書、領収書など)

結論は、決算書や総勘定元帳などの帳簿関係は保存期間の長い会社法上の10年、その他請求書、領収書などの書類については7年(赤字が生じた年度は、時期に応じて最長10年)の保存期間となります。

 

Ⅲ ペーパーレス化に向けて(電子帳簿保存法)

 日々増え続ける請求書、領収書などを7年間~10年間も紙で保存していくのは大変なことです。保管スペースの問題や、保管期間を超過した資料を適時に廃棄する手間など、様々な面倒があると思います。では、紙で受け取った請求書をPDFで保存することは可能でしょうか。結論は、請求書などの書類をPDF等の電子データで保存するためには、以下の要件が必要になります。※書類の種類などにより、要件が一部異なります。

税務署長の承認

保存を開始する日の3か月前までに、税務署長に承認申請書など必要書類を提出すること

 

真実性の確保

・入力期間の制限、受領又は作成後、一定期間内又は適時にデータ化すること
・スキャナ等の解像度要件 ・解像度、階調など読取情報の保存
・データの訂正等の履歴、ヴァージョン情報の保存
・タイムスタンプの付与 ・入力者等の情報の確認          

など

 

可視性の確保

・帳簿と書類の相互関連性を通し番号などで確認できること
・一定の要件を満たすカラーディスプレイなどの備え付け
・日付や金額で検索できる機能(範囲指定・複数条件での検索)
・システムの概要、保存に関する事務処理規定の備付け     

 など

 

 上記の要件を満たさない場合には、原則通り、PDFデータを印刷して紙で保存する必要があります。しかし、要件を満たすためには、システムの構築や運用上の留意点があります。一定のコストがかかりますので、事務処理の効率化と見合うのか、投資前に判断が必要となります。

 

茨城県つくば土浦税理士 武石光弘